『私を離さないで』
2005年に刊行され日本でもドラマ化されたこの人気作は、クローン技術が浸透した”もう一つの世界”を描く。
舞台は1990年代末の英国。寄宿舎風の施設で学ぶ主人公の男女3人は、表向きは他の子どもたちのように、絵やスポーツに励みながら成長する。しかし、やがて自分たちが他人にあるものを「提供」するためだけに生かされた特殊な存在であることを知る。とても短く、過酷な運命を強いられた若者たちの悲痛な物語だ。
抑制の効いた語り口とは対照的に、この激しい感情に触れて見ろと言わんばかりのドラマが展開される。淡々とした語り口調と過酷な描写が相まって、見るのが辛く感じる時もある。それでも物語が面白く、飽きるまで何度もこのドラマを見まくった。
男女の壊れやすい友情と恋愛をつづり、信じるに足りない人に囲まれている姿や、強く信じていたことが崩れ去るに至っても人生を諦めない強い姿勢を描く。親として、何にもましてうちの子供がそんな苦悩を経験しないといいと思わずにはいられない。また、このドラマは主人公らを見守る教師たちの葛藤や苦悩も描く。実際にこのような目に遭っている人を救う方法はないものだろうか。
イシグロ氏は来日時のインタビューで「命は、はかない。私はこの作品をただのSFという風には考えていない」と語っていた。取材を兼ねてこのような話が聞けるとは。このドラマは突飛めいた内容であるように見えて、実は人ごとではない。誰にとっても人生は有限で、終わりは思いのほか早く来るかもしれない。作家はその心理を、虚構の力を使って強調して見せているだけなのだ。逃げられない現実をどう受け入れ、どう生きていくのかと、静かに問いかけながら。
一生で成し遂げられることは限られている。でも、日々積み上げた小さな喜びの瞬間は記憶の中で生き続ける。そう思った時、悲しいディストピア(半理想郷)的な小説が優しい色合いを帯び始める。
このような深い作品をドラマで見ることができ、嬉しい限りだ。
突飛=行動や発想が、斬新・奇抜であるさまなどを意味する表現。
『新型スマホとAIの進化』
韓国サムスン電子は、22日、主力スマートフォン「ギャラクシー」の新型モデル「S25」を発表した。AI(人工知能)が複数のアプリを同時に操作して業務をこなす「AIエージェント」機能を新たに搭載した。31日から予約を受け付け、バレンタインの2月14日に発売を開始する。S25の最大の特徴となるAIエージェント機能では、例えば「旅行のプランを調べて計画して友達に伝えて」と指示すれば、AIが様々なプランを調べて検討し作成、それをリストにまとめ、友人にメールで送信するといった作業を全て自動で行う。また、冷蔵庫の中を写真に撮り、「この中にある食材だけで作れるレシピを教えて」と指示すれば、複数のアプリを操作して回答してくれる。AIが驚くべき進化を遂げていることは言うまでもない。もはや、「人間をあっと言わせてみせる!」というメッセージすら感じる。ただ「全て信じるべからず」で、インターネット上にある情報が正しいかどうか、それを確認することを怠ってはいけない。お年寄りはおろか、若者でさえ騙されるケースが少なくない。最近のAIは画像や動画も作ることができ、すでにソーシャルメディアには、AIが管理するアカウントがいくつも存在するらしい。また、その技術を悪用し、ネット上に公開されている顔写真を使って悪意のある画像を生成する人もいるようだ。そのような人は何かしらの法や規則に則って処罰されるべきだ。さて、そんな最新の機能を盛り込んだサムソンの新たなスマホは、英語だけでなく日本語での音声入力にも対応するそうだ。画面サイズは6.2インチで、税込み12万9000円から。高機能化に伴い、前回のS24から3〜5パーセントの値上げとなった。これからもスマホの高性能化と高額化がより進むと見られている。
AI(人工知能)=コンピューターで、記憶・推論・判断・学習など、人間の知的機能を代行できるようにモデル化されたソフトウエア・システム。
Get access to all 3 N1 Lesson 7 reading passages
Premium users get access to our entire reading passage collection for all 5 JLPT Levels.
Start your payment-free Trial to get access to these plus our SRS study system, Cram Tool, and other great features!